前置き
以下に述べていることは、木材を科学的視点でみたもので、ペレット化を行うに際して、どの辺りが重要に関わってくるかは まだ見定められていません。
(ごめんなさい。編集者より)
一般に植物は、大気中から葉の気孔を通じて取り入れた二酸化炭素と土壌中から根が吸い上げた水とから、葉緑体の働きによって光合成を行ない有機物をつくりだし、同時に太陽エネルギーを植物自体の中に化学エネルギーとして固定する。
地球上にある生命体のうち、殆どは植物であり、その約90%は森林である。その森林には、樹木や菌類だけでなく、動物の生息の場となり、その動物の一種である人類も、木の実や芽、森林に棲む動物などを食物とし、樹木を燃料や住居や道具を作る材料とするなど、森林を生活の基盤として生活してきている。
しかし、現在の多くは水源かん養、国土保全、災害防止、気象の緩和などの環境資源としての非市場経済的な価値により、ないがしろにされています。
針葉樹と広葉樹
裸子植物の針葉樹と双子葉植物の広葉樹では木部の組織や科学的組成に違いがあるが、木材を構成している主成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニン(これを木材の3主要成分という)は、約90%を占めることは基本的には同じである。ただ構成組織により針葉樹が軟材、広葉樹が硬材とよばれるほど、利用方法も含め違ってくる。
主成分と副成分
木材を構成している成分は主成分と副成分に大別され、主成分はセルロース、ヘミセルロース、リグニンから成り、副成分は脂肪族化合物、芳香族化合物、テルペン類、窒素化合物、ペクチン質、無機質などから成っている。
この成分のうちセルロース、ヘミセルロースは細胞壁構成成分であり、リグニンは細胞壁中および細胞間層に分布して木質化に関係するとともに樹体の形成に直接関わっている。これらの主成分の合計は、一般的な木材においては樹体構成成分の90%以上を占め、樹種などによる差は殆どみられない。
これに対して、副成分である樹脂、精油、タンニン、アルカロイド、タンパク質、色素などは、一部細胞壁に沈積しているのもあるが、多くは細胞内腔や細胞間隙などの特殊な組織に存在しており、樹体の構成に直接には預かっていないが、しかし、これら副成分は主成分と異なり樹木の生理作用と直接結びついていることが多く、必要不可欠な成分である。
※主成分のうちヘミセルロースとリグニンについては針葉樹と広葉樹の間に含有量の差が少しあるが、セルロースではほとんど差がない。
主成分
(1)セルロース
木材組成成分中の約40~50%を占め、針葉樹と広葉樹の間には基本的差は無く、樹木繊維の骨格を構成し、木材の強度の源となっている。
また、綿や麻などの植物にはより高純度のセルロースが存在し、衣料用繊維などとして利用されている。
C6H10O5 の構造式で表され、グルコースが鎖状に長く連なった高分子体である。植物内のセルロース分子は集合して繊維を形成しているが、その集合形態により、「結晶領域」と「非結晶性領域」が存在する。
(3)リグニン
リグニンは木材組成成分中の約18~35%を占め、多糖類とともに植物体の骨格を形成している物質で、草本類にも含まれ約15~25%含有している。各組織を強固にする事が出来る。
また、針葉樹と広葉樹ではリグニンの含有量ならびに各構造が異なっており、針葉樹は22~35%(主にグアイアシルプロパン型)、広葉樹では18~29%(主にグアイアシルプロパン型とシリンギルプロパン型)である。
P-クマリルアルコール(C9H10O2)とコニフェルアルコール(C10H12O3)とシナピルアルコール(C11H14O4)の3種類のリグニンモノマーが酸素の触媒の元で重合して生成した三次元網目構造の巨大な生体高分子である。
副成分
(1)中性溶剤不溶部
無機成分、窒素化合物、ペクチン質などが含まれ、無機成分には、カルシウム、カリウム、シリカ等があり、温帯産(日本を含む)の一般的な木材では含有量が0.1~0.9%であり、通常針葉樹で少なく広葉樹に多く含まれる。
(2)中性溶剤可溶部
脂肪族化合物、糖類、芳香族化合物、テルペン類などがあり、樹種によって様々な形成を行ない、大きくバラツキがある。
幹の構造と化学成分
(1)木部
樹幹木部の外周部の淡色の部分を辺材、その内側の濃色の部分を心材と呼び、その組織構造は類似するが、生理学的にはかなり異なっている。
辺材部と心材部の主成分(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)の組成には大差ないとされるが、副成分(抽出成分、灰分など)ではその組成と含有量に大きな差が存在する樹種が多い。
針葉樹も広葉樹も、木部における主成分の構成比率はほぼ同じであるが、ヘミセルロースの組成及びリグニン構成単位の構造に違いがある。
特殊環境下で生育した場合、偏心成長が起こり異常肥大した部分に「あて材」が形成される。針葉樹では傾斜した幹の下側に「圧縮あて材」、広葉樹では上側に「引張あて材」が形成される。
針葉樹の「圧縮あて材」はリグニンを多く含み、セルロースが少なく、正常材には見られないガラクツガラクタンが存在する。
広葉樹の「引張あて材」には、セルロースを多く含み、ペントサン及びリグニンが少ないが、引張あて材の反対側の材部では、逆の傾向を示し、セルロースが少なく、リグニンを多くふくむ。
(2)樹皮
樹皮の化学成分は木部のそれとかなり異なり、灰分、抽出成分、リグニン様物質、スベリンが多く、ホロセルロースが少ない。また、樹皮の灰分の大半はカルシウムであるが、樹種によってシリカを含むなど多様となる。
(3)早材と晩材
早材は晩材に比較してセルロース量が少なく、リグニン量が多い。これは早材の細胞壁が晩材の細胞壁に比べて薄く、細胞間層が厚いためである。細胞壁はセルロースに富み、細胞間層はリグニンに富んでいるためである。
(4)灰分
国産材の基本的データとして、
①健全材で1%以上の灰分を示す場合は、稀である。
②平均値は針葉樹より広葉樹の方が多く、
針葉樹 0.4±0.4%
広葉樹 0.5±0.2%
③早材の方が晩材に比べ灰分が多い。
幹部の灰分を多く含む樹皮の割合が多いためである。
④無機成分元素
特殊環境下を除き極端に濃度順位が入れ替わることは少ない。
多く含まれるCaとKに関しては樹種により入れ替わることはある。
C、H、O以外で樹木中に最も多く含まれる元素はCaで、次いで N、K、P、Mg、Mn、Fe、Al、Zn、Cu、B、Moとなるが、この分野での研究は比較的少なく、その存在意義すら明らかにされていないのもある。